”夏商戦”(7~8月)は長らくゲーム業界にとって年末商戦に次ぐほどの、非常に大きな商戦期とされてきました。

しかしながらここ数年は市場規模が低迷。昨年に至っては、もはや商戦期とは呼べないほどに落ち込んでしまいました。

ですが、今年は一気にV字回復!
ドラゴンクエスト11とSplatoon2という二大巨頭をはじめ、注目作が活躍したことで、今年の夏は非常に活発な家庭用ゲーム市場を取り戻しました

というわけでこの記事では昨年・一昨年と今年の夏商戦(7~8月)を比較し、市況の簡単な分析と考察をしてみたいと思います。
理屈っぽい記事ですが、私はこの手の方面の話も結構興味があったりするんですよ。
(記事のデータはすべて電撃オンラインの週間ソフト販売ランキングの数字を引用しています。)

まずはデータを羅列してみます。(二か月間の合算データです。)

ソフトの販売本数
628万本(2015年)→444万本(2016年)→670万本(2017年)

ハードの販売台数
74万台(2015年)→56万台(2016年)→131万台(2017年)

市場規模
504億円(2015年)→392億円(2016年)→778億円(2017年)

売上ベスト2

2015年
1位 3ds 妖怪ウォッチバスターズ 赤猫団/白犬隊 (142万本) 
2位 3ds どうぶつの森 ハッピーホームデザイナー(97万本)

2016年
1位 3ds 妖怪ウォッチ3 スシ/テンプラ(110万本)
2位 PS4/PS3 テイルズ オブ ベルセリア(30万本)

2017年
1位 PS4/3ds ドラゴンクエスト11 過ぎ去りし時を求めて(298万本)
2位 NSw スプラトゥーン2(105万本)

<2017年夏商戦のハード別売上台数>
Nintendo Switch 50万台
3ds 44万台
PS4 33万台


といった感じになっています。

まず注目すべきは市場全体の規模。
昨年は初めてソフト・ハード合算の売り上げが400億円を割り、過去最低水準まで落ち込んだことが悪い意味で話題となりました。

しかしながら今年は去年の約二倍もの金額を叩き出し、DSやPSPなどが勢いを維持していた2010年以来となる700億円突破を果たしています。
これはまさにドラクエ11、スプラトゥーン2による功績が非常に大きいことは言うまでもありません。

ここからハード・ソフトそれぞれについて分析してみます。

まずはハードから。
ニンテンドースイッチは今年発売された新ハードですから、ここではこの数字を差し引いて考えてみます。
すると一昨年の74万台、昨年の56万台に対して、今年は81万台(スイッチ除いた数字)となります。

これを見て分かる通り、3dsやPS4といった一定の普及をみている機種だけで比べても、ゲームハードの売れ行きが加速していることが分かります。

これは一つにはもちろんドラクエ11が大きな牽引効果を発揮したことを裏打ちしています。実際2dsLLを含む3dsシリーズには特に大きな効果が見られました。
PS4も前年比で約二倍の売上となっていて、ドラクエ11の牽引効果が見られますが、PS4はそもそもラインアップが充実してきたことやPSVRへの注目なども踏まえ、ハードそのものへの需要が高まっていることも要因と考えられます。

続いてソフトウェアについても目を向けてみます。
ソフトウェアは大型タイトルによって直接的な変動が起こりますので、ここではあえて中堅以下のタイトルに対して市場の活性化の効果があったのかを考察してみましょう。

具体的には各年において、TOP2の作品の販売本数を差し引き、大型タイトルを除外しての数字を比較します。ただし2015年に限っては、3ds「ドラゴンクエスト8」(60万本)もビッグタイトルと捉え、3位まで除外します。

こうしてみると、
329万本(2015年)→304万本(2016年)→267万本(2017年)
となり、微減といった数字に見えます。

ただし、2015年・2016年は10週間の集計に対し、2017年は9週間の集計となっているため、単純計算としては267万本×10÷9によって、ベースとしては約300万本程度の売れ行きと考えることができます。

つまり中堅以下のタイトルに関しては、ほぼ横ばい。ビッグタイトルに食われてしまった作品もあることを考えると、好意的に捉えれば底堅い需要がある、と言えるでしょう。

付け加えておくと、ビッグタイトルが市場全体を活性化するという点については、その効果がそうしたタイトルの発売よりも少し遅れて現れることが知られています。
というのも、そうしたタイトルをクリアしてから、家庭用作品の良さを再認識し、別のタイトルに手を伸ばす方が一定数存在するからです。

その意味では、9月以降の中堅以下のゲームの売れ方というのは注目する価値がある、と考えることができますね。

さて、以上のように、この夏商戦は二大ビッグタイトルとニンテンドースイッチの登場、現行ハードの需要の増加により、市場規模が一気に回復しました。

しかし最後に触れた通り、中堅以下のタイトルに効果が波及するかどうか、というのが今後を左右する重要なポイントになってきます。
ゲーム業界が活性化したことはひとまず素直に喜びつつ、今後の動きにも目を向けていきたいと思いますね。




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