いやあ、これは面白い……プレイ中何度も唸ってしまいました……。これは評価が高いのも納得の内容(@_@)

今回取り上げるのは海外のインディーゲームスタジオ”Campo Santo”が制作した「FIREWATCH(ファイアーウォッチ)」。PS4で2018年2月7日から1980円(PSプラス加入者は1386円)で配信されているミステリーアクションアドベンチャーゲームです。 

DV6g4A4VQAAxP4b

以下のレビューは大きなネタバレがないように配慮して書いていますが、一番最後に私なりの考察を加えています。この項目はネタバレ要素を含みますので、一気にスクロールされないことをおすすめします。

FIREWATCH(ファイアーウォッチ)の概要・序盤のあらすじ

本作はアメリカ・ワイオミング州の自然保護区を舞台とした一人称視点のミステリーアドベンチャーゲーム。主人公「ヘンリー」はとある事情で森林の山火事を防ぐ「火災監視員」をはじめます

そんな主人公にトランシーバーで指示を出すのが別の監視塔で働く女性「デリラ」閉ざされた山奥の中、顔も分からない相手との交信が主人公にとって唯一のコミュニケーションということになります。

無線機での対話中、プレイヤーはデリラへの返事を数々の選択肢から選ぶことになり、その選択によってストーリーが変化。彼女とのやり取りが本作のストーリーそのものとなっているというわけですね。

そんな本作はアドベンチャーといっても、インタラクティブ性がかなり強め。
というのも、主人公が実際に山を探索しながら物語を進める形式となっており、マップとコンパス、ロープといったアイテムを駆使して目的地を目指していくことになります。

不気味さと物寂しさが伝わってくる世界観

本作をプレイしはじめて最初に感じたのはその独特な世界観の素晴らしさ。

DV6g4W9U0AAuMQ5
オープニングでは簡素な文章で主人公が遠く離れた山に向かう理由が語られます。ここでキャラクターたちの顔は一切出てきません。しかしそれなのに引き込まれてしまうのが不思議…。

オープニングが終わり、主人公がツー・フォークス監視所にやってきてからが本作の本題。山火事監視員としての仕事が始まります。

DV6gqg8U8AErwxb
真夜中の監視所はどこか不気味。

また舞台となるツー・フォークス・ウッズはとにかくその景観が美しいんです!
DV6gpbkVoAEdGU3DV6gVpXUMAAXffy
DV6gomuV4AAeenEDV6gUuTU8AAH3Eq

湖や森林、丘といった多彩なロケーション。さらに章(日にち)ごとに昼間・夕暮れ・夜と時間帯などが変化するため、景色を見飽きるということがなく、自分自身が本当に山で生活しているような気分になります。

さらに本作のグラフィックはただ綺麗というだけでなく、どこか影を感じさせるのが特徴。何が起こるか分からないミステリアスな世界観にぴったりマッチしています。

二転三転するシナリオに引き込まれる

概要でも書いた通り、本作のストーリーはほぼすべて主人公の「ヘンリー」と上司である「デリラ」の無線による会話で語られます。

DV6g6OPV4AArkST

一人孤独に広大な山の中を散策することになるため、このデリラとの会話は主人公にとっての生命線であり命綱のようなもの。探索の途中で見つけたものを逐一報告することもできますし、向こうからも途中でいろいろと話しかけられたり指示を出されたりします。(プレイヤーはといえば、次々と表示される選択肢から好きなものを選んで応答していくことになります。)

このデリラは遠く離れた別の監視所にいるためどんな顔なのかさえ分かりません。これがまたプレイヤーの想像力を引き立ててくれ、ある意味「かまいたちの夜シリーズ」を彷彿とさせるものがあります。

かくいう私自身もプレイしているとだんだんデリラに愛着が湧き始め、彼女の声が通じない場所なんかに行くと一人ぼっちになったことを実感し、もう不安で仕方ありませんでしたw
人里離れた山奥という舞台において、たった一人の人物との会話だけでストーリーを語る。緊迫感と寂寥感を強く感じさせる、斬新で見事な手法だと思いますね。

DV6gUBAVwAAlLtc

しかし”たった二人の人物の交信で描くストーリー”ということで、それってちゃんとしたものになるの?という疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれません。

私もはじめはそう思っていました。
ですがご安心ください。

何か思いもよらないことが迫っている不安感、謎が謎を呼ぶ展開、じわじわと鳥肌が立つような精神的な怖さ、醸成されていく信頼or疑心
それらが本当に二人の交信だけで伝わってくるんです。このゾクゾク感は他のゲームでは味わえません「怖いもの見たさ」という言葉がこれほどしっくりくる作品は滅多にないのではないでしょうか。

マップを歩き回ることで生まれる没入感

本作はただシナリオを追うだけのアドベンチャーではなく、実際に管理区域であるツー・フォークス・ウッズエリアを自由に歩き回ることができます

小規模なゲームだろうと思っていただけに、その広さにビックリ!
DV6gTWaUMAAK4zj
地図とコンパスをしっかり見ながら進まないと迷ってしまうほどの広さです。おそらく全体を一周しようとしたら軽く1~2時間以上はかかるのではないかと思います。

またその最中に主人公はヤブをかき分けたり、段差を飛び越えたり、ロープを繋いだりと様々なアクションをとります。いずれもボタン一つの操作ではありますが、これらが山の探索にリアルさを与えており、より没入感を高めてくれていました
(結果として監視所に帰ってきた時の安堵感と、遠い場所まで来てしまった時のヒリヒリ感がすごかったです…。)

親切で快適なゲーム設計

本作の地図はなかなか優秀で、常にコンパスとセットで表示できるために目的地の方角は一目瞭然です。

またインディー作品とは思えないほど丁寧に設計されていて、操作説明も丁寧。選択肢の受付時間が短く慌ただしいこと、若干処理落ちが目立つこと(PS4Proでプレイ)など気になることがないわけではないですが、大きな減点をするほどでもない印象です。

またPS4版は日本語字幕に対応していますが、この和訳も自然でいい感じ。ちなみにゲーム開始当初は字幕OFFになっていますので設定でONにする必要があります。

総評

なんといっても世界観とその雰囲気・アイディアが素晴らしく、思わず唸るストーリーの構成も巧妙。
一言でまとめるなら、作品の端々にプレイヤーを引き付けてゾクゾクさせるセンスを感じられる作品

二人の交信や探索中に見つかる手紙や書類。そうした特殊な語り口で断片的に紐解かれていくミステリーは上質で味わい深いものでした。なにより「山火事監視×ミステリー」という目の付け所がいい!

加えて自分が本当に山奥に閉じ込められてしまったかのような孤独感。閉鎖された世界(クローズドサークル)が生み出す緊迫感。それは自分自身が一本の映画の世界に入り込んだかのような不思議な体験を作り上げています。これはゲームのインタラクティブ性によって実現されていると言えるでしょう。

というわけで私個人はもう大満足の本作。
人を選ぶ感がないわけではないですが、ミステリー好きな方、心理的スリルにドキドキするのが好きな方はぜひともプレイしてみていただきたいですね!(なおボリュームは5~10時間程度だと思います。)

※なおクリア後はいろいろな解釈ができそうな内容でもありますので、ここから先には考察も書いておきました。

簡単な考察(ネタバレ注意!)

画像の下はネタバレゾーンとなります。未クリアの方はクリアされてからご覧ください!

DV6gp32U8AASTXIDV6g5dwVoAEUGAF

そもそも本作のストーリーの流れを整理しておくと、ネッドははじめブライアンのことがばれないよう、ヘンリーとデリラの無線を傍受していました。

しかしヘンリーたちは無線が傍受されていることに気が付き、徐々にブライアンの元に近付いていくことになります。
(少女たちも事件に関わっているのかと思っていましたが、彼女たちは注意された腹いせに主人公のシーツを盗んだだけだったようですね。)

さて、そこで私が疑問だったのは、「ネッドが自らの息子であるブライアンの事故の顛末が露見しないようにヘンリーとデリラのことを見張っていたのであれば、ラストで彼は一体なぜ洞窟の鍵をヘンリーに見つけさせ、ブライアンを発見できるようにお膳立てしたのか?」ということでした。

その解釈として(あくまで私が勝手に)考えたのがこういう筋書き。

・ネッドはヘンリーたちがワピチステーションに忍び込んだ際、脅威を感じて山に火を放ち、ヘンリーたちをその犯人に仕立て上げようとした。
・しかしそれと同時にこのままブライアンを見つかったら自らの良心の呵責からも逃れられるということがネッドの頭をよぎった。ネッドが息子を失って以来ずっと山にいることからも分かる通り、彼は深い罪の意識を抱いていた。
・燃える山を見てネッドの葛藤は大きくなった。このまま山が消失してしまえば自らの息子や真実を焼き払ってしまうことになるからだ。
・結果ネッドは自らの罪を告白し、真実を明らかにすることに決めた。

これでもなお謎である部分は多いわけですが、最大の疑問に感じていた部分は自分なりに納得できました。

「いやいや、あれはこういうことでしょ!」「こういう解釈の方が自然だよ!」といった考察・ご意見ありましたらぜひとも教えていただけると嬉しいです。まだ飲み込めていないところが結構ありますが、意外とネット上の考察が少ないような気がしますので(^_^;)

スポンサードリンク